令和6年1月27日  第9回IERセミナーを開催しました。<べガム・ジンナット・アラ 外国人客員研究者、和田敏裕 教授、アレクセイ・コノプリョフ 特任教授(副所長)>

日時2025年1月27日(月) 13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者べガム・ジンナット・アラ 外国人客員研究者
和田敏裕 教授
アレクセイ・コノプリョフ 特任教授(副所長)
演題ヘキサメタリン酸ナトリウム:土壌元素との結合挙動における化学的分散剤(べガム)
福島第一原発事故後の漁獲努力量の減少がカレイ類などの水産資源に与える影響(和田)
季節的変動を考慮した淡水中の溶解137Csの長期的動態:チェルノブイリと福島(コノプリョフ)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

127日(月)に開催した令和6年度の第9IERセミナーでは、べガム・ジンナット・アラ外国人客員研究者、和田敏裕教授、アレクセイ・コノプリョフ特任教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら18名が参加しました。べガム・ジンナット・アラ博士は、六偏リン酸ナトリウム(SHMP)を使用して放射性セシウムで汚染された土壌の体積を削減する可能性について発表しました。このプロセスでは、湿式ふるい分けにより土壌凝集体を分離し、その結果得られる汚染物質、鉱物、有機物の分画を分析します。SHMPの結合反応は、土壌有機物と結びついた特定の元素の可溶性を改善し、土壌サイズの分画間での放射性セシウムの移動を促進する可能性があります。現在進行中の研究の目的は、SHMPと金属イオンの結合の挙動の包括的な理解であり、放射性セシウムで汚染された土壌の体積を削減する可能性を明らかにします。和田教授は、2011年に発生した福島第一事故後の漁獲努力量の減少が福島県沖の底魚資源に与える影響について発表しました。2012年,2013年,2014年の試験操業の漁期(9月~翌年6月)における水深150210mの底びき網の曳網時間は,震災前の2.0%,2.9%,4.0%であり,単位努力量あたりの漁獲量(CPUEkg/h)は,それぞれ震災前の270%,251%,196%と算出されました。2014年の水深120130mにおける種ごとのCPUEは、多くの魚種で震災前のレベルを上回りました。調査船による沿岸域から沖合域のトロール調査では、多くの底魚類の密度(kg/m2)が同様に増加しました。複数のカレイ類の密度は事故後数年でピークに達し、2015年のサイズ組成は原発事故前に観測されたものより著しく大きくなりました。対照的に、ズワイガニのようないくつかの種の密度とサイズは減少していることが明らかとなりました。これらの結果から、漁業活動がカレイ類をはじめとする漁業資源に大きな影響を与えることが示されました。アレクセイ・コノプリョフ特任教授は、淡水中の溶存態137Csの季節的な変動を考慮した長期的な動態について、チョルノービリと福島を比較しながら発表を行いました。プリピャチドニエプル流域における溶存態137Csの規則的な季節変動を初めて確認し、それらの変動幅は、年によって2.53.5でした。溶存態137Csの季節的な変動は、水温の季節変化と同期しており、基本的には水温の上昇による堆積物からの137Csの再溶出が原因です。プリピャチドニエプル川の堆積物における137Csの脱着活性化エネルギー(22 kJ/mol)は、阿武隈川の値(20 kJ/mol , Igarashi et al., 2022)と類似していました。季節変動を考慮した溶存態137Csの長期減少に関する経験的および半経験的モデルを提案し、プリピャチドニエプル流域と阿武隈流域の観測データを比較しました。発表後には、質疑応答が行われました。

べガム外国人客員研究者が発表している様子
和田教授が発表している様子
コノプリョフ特任教授が発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子