令和6年3月4日  第12回IERセミナーを開催しました。<大学院生、シャボシュ外国人客員研究員者>

日時2024年3月4日(月) 13:30~15:00
場所環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom)
発表者ラシェドゥル・イスラム・リポン(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士後期課程2年)
庄子 信利(共生システム理工学研究科 環境放射能学専攻 博士前期課程2年)
ピエール-アレクシス・シャボシュ 外国人客員研究者
(発表順)
演題・クラウンエーテル環にメソポーラスシリカを導入した吸着剤による廃液からのセシウム分離(リポン)
・福島県内各自治体の土地取引データからみた原発事故の影響(庄子)
・福島県沖に堆積した河川由来の堆積物と放射性セシウムの定量化(シャボシュ)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

3月4日(月)に開催した令和5年度の第12回IERセミナーでは、環境放射能学専攻 博士後期課程2年生1名、博士前期課程2年生1名、ピエール-アレクシス・シャボシュ外国人客員研究者が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら13名が参加しました。

ラハマン研究室のリポンさんは、「クラウンエーテル環にメソポーラスシリカを導入した吸着剤による廃液からのセシウム分離」について発表しました。クラウンエーテルは、その環サイズとほぼ同じ大きさのイオン半径を持つセシウムに対して高い親和性を示す大環状化合物です。セシウム溶液中にクラウンエーテルを用いた吸着剤を投入することにより、セシウムイオンを選択的に捕捉することができます。リポンさんは、新たに開発した吸着剤を用いて、廃液からセシウムを分離する能力を評価しました。

脇山研究室の庄子さんは、「福島県内各自治体の土地取引データからみた原発事故の影響」について発表しました。福島第一原子力発電所の事故により福島県の基幹産業である農業の主要インフラである農地は深刻な打撃を受けました。原発事故による避難指示が発令された12市町村では作付け制限が続いており、営農再開割合は、わずか10%にとどまっています。庄子さんは、原発事故の影響を受けた農地に注目し、事故の影響は農地の活用や農地の取引、さらには農業従事者の営農に対する取組の変化に現れるだろうとの仮説を立て、それを検証する研究を続けています。

シャボシュ外国人客員研究者は、日本学術振興会のフェローシップ制度を活用して現在進行中の研究の成果を発表しました。博士は、福島県内の三つの河口域から採取した柱状堆積物(コア)の研究に重点を置いています。また、河口域に堆積したセシウムを含む土砂の生産源を特定しうる独自のトレーサー(追跡子)の発見を目指しています。これまでの研究で、堆積物中のセシウム137の分布の広がりや深さは一様でないことが明らかになっています。また、蛍光X線分析装置、X線CTスキャナーで撮影した断層写真、粒度分布計を用いた研究によって、台風などの極端な気象現象が、河口域におけるセシウム堆積の一因であることが特定されています。発表の最後に、堆積物に含まれる有機物の特定、XRFコアスキャナーを使用した堆積物の分析など現在進行中の研究や、除染活動が河口域の堆積物に与える影響と陸域から海域へ移行したセシウム137の数値化を目指すプロジェクトの展望について語りました。

各発表後には、IER教授陣から様々な質問やコメントが挙がりました。

研究発表をするリポンさん
研究発表をする庄子さん
シャボシュ外国人客員研究者が発表している様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子
質疑応答の様子