令和6年2月26日 第11回IERセミナーを開催しました。<ジンナット外国人客員研究者、ラハマン准教授(肩書は当時)、鳥居特任教授>
日時 | 2024年2月26日(月) 13:30~15:00 | |||||
場所 | 環境放射能研究所本棟6F大会議室/オンライン(Zoom) | |||||
発表者 | べガム・ジンナット・アラ 外国人客員研究者 イスマイル・ラハマン 准教授 鳥居建男 特任教授 (発表順) | |||||
演題 | ・化学分散剤の活用による放射性セシウム汚染土壌の減容化(ベガム) ・超分子を用いたストロンチウム抽出剤の開発と、水溶液からの放射性ストロンチウムの分離(ラハマン) ・新しい概念に基づく放射線分布可視化ツールの開発(鳥居) |
環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。
2月26日(月)に開催した令和5年度の第11回IERセミナーでは、べガム・ジンナット・アラ外国人客員研究者、イスマイル・ラハマン准教授、鳥居建男特任教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら24名が参加しました。
べガム外国人客員研究者は「化学分散剤の活用による放射性セシウム汚染土壌の減容化」について発表しました。福島第一原子力発電所の事故後、避難者の帰還を促進するために実施されている大規模な除染作業の結果、大量に発生した除去土壌の容積を効果的に削減する革新的な方法の必要性が高まっています。博士は、ヘキサメタリン酸ナトリウムを用いた分散剤が、除去土壌から高濃度の放射性セシウムを含む土壌粒子を分離する能力について説明しました。また、除去土壌中の一価イオン、多価イオン、有機炭素の濃度、土壌の機能グループなどの因子が、放射性セシウムの土壌粒子への吸着と「放射性セシウム汚染土壌の減容化」に与える影響について解説しました。
ラハマン准教授(肩書は当時)は、「超分子を用いたストロンチウム抽出剤の開発と、水溶液からの放射性ストロンチウムの分離」について発表しました。ラハマン准教授は、クラウンエーテルを用いて新たなストロンチウム抽出剤を開発しました。具体的には、ジベンゾ-18-クラウン6-エーテル(DFDB18C6)と、アミノプロピル基をグラフト重合したシリカメソ多孔体SBA-15(SBA-NH2)を組み合わせて、新しい固相抽出剤を合成ました。また、放射性ストロンチウムと化学的な性質が近似する安定ストロンチウムを用いて抽出剤の性能評価を行い、pH、反応時間、水溶液中のストロンチウムと競合イオンの濃度比、水溶液の温度などの因子が抽出剤の効果に与える影響を説明しました。
鳥居特任教授は、さまざまな方向から入射する放射線の分布を目視化できるフラクタル構造の新しい放射線測定装置の開発について発表しました。既存の測定装置では、ガンマ線を映像化することは可能でしたが、ベータ線等の荷電粒子の測定は困難でした。新しく開発した装置は、ガンマ線のみならずベータ線の分布も全方位で測定可能なので、環境中の放射線測定だけでなく、さまざまな分野での応用が期待されます。実際に帰還困難区域内のホットスポット(放射線量が局所的に高い場所)を検出した例や、福島第一原子力発電所構内から100m離れた場所で放射線源の分布を可視化した事例が示されました。発表後半では、群ロボットを用いた放射線検出システムの開発についても紹介されました。
各発表後には、IER教授陣から様々な質問やコメントが挙がりました。