令和5年11月30日  第7回IERセミナーを開催しました。<藤島名誉教授>

日時2023年11月30日(木) 16:30~17:30
場所共生システム理工学類研究実験棟7F生態学実験室
発表者藤島 政博 山口大学名誉教授
山口大学中高温微生物研究センター客員研究員
福島大学環境放射能研究所(IER)客員研究員
演題ゾウリムシを用いた細胞内共生の成立機構の研究

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

令和5年度の第7回IERセミナーとして、山口大学名誉教授で環境放射能研究所客員研究員の藤島政博先生による講演「ゾウリムシを用いた細胞内共生の成立機構の研究」を理工学類の生物系セミナーと共催で開催しました。

ゾウリムシ(𝘗𝘢𝘳𝘢𝘮𝘦𝘤𝘪𝘶𝘮 𝘤𝘢𝘶𝘥𝘢𝘵𝘶𝘮)の大核にはバクテリア(𝘏𝘰𝘭𝘰𝘴𝘱𝘰𝘳𝘢 𝘰𝘣𝘵𝘶𝘴𝘢 以下ホロスポラ)が共生します。共生によって、宿主ゾウリムシは高温や高塩分等に対する耐性を獲得します。ゾウリムシの摂食活動で食胞(DV)に取り込まれたホロスポラは融合するリソソームに含まれる成分による分解を免れ、DVを破りゾウリムシの大核の核膜を認識して入り込みます。藤島先生の研究室では、餌として取り込まれたホロスポラがゾウリムシの核に共生するメカニズムの解明に取り組んでこられました。講義では、免疫染色の手法と同調培養の技術を駆使して進められたホロスポラの食胞から核への移動と核膜の認識に関与するタンパク質やリポ多糖を特定するというエキサイティングな研究が分かりやすく紹介されました。

ホロスポラの共生で終了時刻となりましたが、残っていた関心がある出席者に藤島先生が続けてミドリゾウリムシ(𝘗𝘢𝘳𝘢𝘮𝘦𝘤𝘪𝘶𝘮 𝘣𝘶𝘳𝘴𝘢𝘳𝘪𝘢)とクロレラ(𝘊𝘩𝘭𝘰𝘳𝘦𝘭𝘭𝘢 𝘷𝘢𝘳𝘪𝘢𝘣𝘪𝘭𝘪𝘴)の共生についても講義を続けてくださいました。

クロレラの場合はホロスポラとは異なり、食胞膜が出芽して1細胞ずつのクロレラが食胞膜に取り込まれた形となって細胞質に切り離されたあと、宿主リソソームが融合できない膜に変化し、ミドリゾウリムシの細胞質内を移動します。そして、本来ミドリゾウリムシが持つ刺胞が配置されている細胞表層直下に移動し、定着します。これらの過程に関与する分子メカニズムの研究をご紹介いただきました。二次植物の成立過程の解明というような研究で、進化生物学的にも興味深いですが、別の視点では、例えば動物に生物工学的に光合成生物を共生させるという共生工学にもつながるような研究であると、藤島先生は夢を語っておられました。

藤島先生が発表している様子
藤島先生を紹介するIER難波謙二所長
ゾウリムシについて説明する藤島先生
研究室の学生さんが描かれた先生の似顔絵も。