令和3年6月22日、29日 IER特別セミナー (オンライン)を開催しました。<渡辺嘉人 博士>
場所
オンライン (Zoom)
外部講師
渡辺 嘉人 博士、量子科学技術研究開発機構 放射線医学研究所
環境放射能学専攻博士前期課程の一部講義では、著名な研究者を講師として招き、その講義を「特別セミナー」として学内の教員等にも公開しています。
◆講義1◆ 日時:2021年6月22日(火)午前10:20 – 11:50
タイトル:Biological effects of radiation in Fukushima
6月22日に開催された渡辺嘉人博士による「放射線影響学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士学生3名と、IERのメンバー数名が参加しました。講義では、放射線影響の基本的なメカニズムやヒトの放射線影響の種類、異なる生物種の放射線感受性について説明があり、特に、放射線感受性が染色体体積に依存することやガンマ線連続照射による傷害について詳しい説明がなされました。また、チェルノブイリや福島の動植物に観測された放射線影響の事例(ヨーロッパアカマツ、ニホンアカマツ、モミ、メダカなど)を挙げ、その染色体異常頻度の線量依存性を分析しました。講義の参加者は、放射線の確定的または確率的影響、また、チェルノブイリ原発周辺の森林の急性の被ばく影響について議論を交わしました。
◆講義2◆ 日時:2021年6月29日(火)午前10:20 – 11:50
タイトル:Effects of Fukushima accident on plants and animals
6月29日に開催された「放射線影響学」のオンライン講義には、環境放射能学専攻の修士学生4名と、IERのメンバー数名が参加しました。冒頭、渡辺博士は、標準動植物(RAPs: reference animal and plants)や誘導考慮参考レベル(DCRL: Derived Consideration Reference Levels)といった環境放射線防護のための基本的な概念を紹介し、それを踏まえて、福島原発事故後の大熊町の陸上と海洋の標準動植物への推定線量率と誘導考慮参考レベルを比較し放射線のリスク評価を行いました。さらに話題は、福島原発事故によって野生動植物に放射線影響が生じたことを示唆する研究例の包括的なレビューから、チェルノブイリ原発事故による野生生物への影響、野外と実験室での放射線影響の違いを解釈する際の問題点、日本のモミの形態異常形成に関する研究の進展、線量評価や放射線被ばく影響の検証実験の重要性等、多岐にわたりました。参加者は、動物種の放射線感受性について、加齢や他の要因による影響も含め議論しました。