令和4年12月26日 第8回IERセミナーを開催しました。<鳥居特任教授、ラハマン准教授、ヨシェンコ教授>

日時

2022年12月26日(月)14:00~16:00

発表者

鳥居建男特任教授
イスマイル・ラハマン准教授
ヴァシル・ヨシェンコ教授 (発表順)

演題

A New Concept Radiation Imager as a 3rd Gen. Gamma Camera [FRIE Detector] (鳥居)
Does open-beach ship-breaking affect the activity concentrations of terrestrial radionuclides in soil ? (ラハマン)
Root uptake of radiocesium into conifers in Fukushima forests and radioiodine into crops in field experiments in Chornobyl
(ヨシェンコ)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。 12月26日に開催した令和4年度第8回IERセミナーでは、鳥居建男特任教授、イスマイル・ラハマン准教授、ヴァシル・ヨシェンコ教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら26名が参加しました。

鳥居建男特任教授は新しい概念に基づく放射線分布可視化ツールの開発について発表しました。その中で、放射線源の3次元分布が分かるフラクタル構造やFRIEなどの放射線測定器について説明しました。帰還困難区域においては、フィールド測定試験を行い、3次元的な放射線分布を求めました。現在は、現場測定に対応できる2号機を開発しており、福島の環境回復・廃炉、様々な分野に適用できるβ・γ線の同時全方位イメージングを目指しています。

イスマイル・ラハマン准教授は、”海岸での船舶解撤が土壌中の陸上放射性核種の放射能濃度に及ぼす影響”について発表し、バングラデシュのチッタゴン大学の研究者と行った共同研究のデータを共有しました。この共同研究の目的は、(a)陸域における土壌中の放射性核種の時空間分布の評価と、(b)陸域における土壌中の放射性核種による潜在的健康リスクの評価です。本研究は、陸域と陸域以外の放射線による被曝の人体への影響を評価するためには、環境中の天然放射性核種と放射線量の分布の評価が不可欠であることから実施されました。そこで、船舶解体が行われた浜辺で土壌中のU-238、Th-232、K-40の放射能濃度の時空間分布を評価し、潜在的な健康リスクを評価しました。報告書では、浜辺での船舶解体が、陸域における土壌中の放射性核種の放射能濃度を増加させないと結論付けている一方、抑制的な影響も想定しています。

ヴァシル・ヨシェンコ教授は、福島県の森林における針葉樹への放射性セシウムの根からの取り込みと、チョルノービリの野外実験における作物への放射性ヨウ素の取り込みについて、最近発表された研究結果を紹介しました。 両研究の結果から、これらの放射性核種の取り込みが、土壌中の、競合イオンの交換体とカリウムと安定ヨウ素の含有量に大きく依存することが分かりました。 また、チョルノービリおよび福島の森林の放射性核種濃度の変動に関する林分調査による研究結果と、チョルノービリ立入禁止区域のマツとカバノキにおける90Srと137Csの径方向分布に及ぼす樹齢の影響についても議論しました。

各発表後にはIER教授陣より様々な質問、コメントが挙がりました。

鳥居特任教授
ラハマン准教授
ヨシェンコ教授
質疑応答の様子