令和3年12月11日(土)郡山市にて第16回研究活動懇談会を開催しました。
日時
令和3年12月11日(土)13:00~16:20
場所
郡山駅前ビックアイ7階
市民交流プラザ 大会議室
オンライン同時配信あり
演題
原発事故から10年を経た内水面漁業の現状と漁業復興に向けた取組
(神山享一:福島県内水面水産試験場 調査部長)
阿武隈川の新たな脅威:外来ナマズの分布と移動生態
(和田敏裕:当研究所 准教授)
鯉に恋する郡山プロジェクトの紹介
(難波謙二:当研究所 所長)
ふくしまを川のなかから盛り上げる
(坪井潤一:国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所主任研究員)
大震災と放射能!川の中から見た10年
(堀江清志:阿武隈川漁業協同組合 事務局長)
※プログラム順
環境放射能研究所による研究活動懇談会は、研究成果を地域に還元するために2016年より開催しております。第16回目となる今回は「阿武隈川の10年とこれから~漁業と地域社会の活性化に向けて~」と題し、東日本大震災から10年ぶりに一部の漁業活動(アユ釣りなど)が再開された阿武隈川の現状と課題、これからの展望などについて講演を行いました。オンラインでも同時配信を行い、オンライン参加・会場参加合わせて約60人が参加しました。
神山部長は、阿武隈川流域の淡水魚の放射性物質について、年を経るにつれて減少傾向にあるものの、減少のスピードが鈍化している状況について話しました。また、淡水魚は海の魚よりも放射性セシウムをため込みやすく、一部で比較的高い数値がでる要因などについても解説しました。また、「釣れるアユ」で福島の河川を元気にしようという、「釣れるアユ」を育てる取組について紹介しました。
和田准教授は、放射能問題だけではない、阿武隈川の新たな脅威である外来ナマズ(チャネルキャットフィッシュ)について講演しました。チャネルキャットフィッシュは食用目的でアメリカから輸入されましたが、近年、阿武隈川中流域で急激に増加しています。本種の急増に伴う魚種組成の変化や、バイオテレメトリー調査により明らかにされた信夫ダムでの移動生態や産卵場所の特定について説明しました。また、ダム域以外の産卵場所特定の必要性など、今後の課題も示されました。
次に郡山市のプロジェクト「鯉に恋する郡山」について、プロジェクトに合わせて郡山市のYouTubeチャンネルで公開されている「どっ鯉ソング~ソスイでSweetなこいのうた~」を難波所長が紹介しました。
坪井主任研究員は福島県内の複数の河川で実施した、アユがどのように放射性セシウムを摂取しているかについての調査結果を発表しました。また関連して、アユが石に付着した藻類(餌)を食べることで川を綺麗にする作用があることや、アユの天敵であるカワウ対策についても解説しました。さらに本やウェブサイト、YouTubeを通して自身が行っている河川でのレジャーを盛り上げるための取組についても紹介しました。
堀江事務局長は、原発事故の影響について、ご自身を福島県地図に見立てたスーツ(写真②参照)などを交えながら説明しました。阿武隈川漁業組合の40年前と現在の状況を比較し、特に原発事故後は組合員数が減少するなど厳しい状態であるものの、最近行ったキャンペーンの効果で組合員が増加したこと、これからの漁業組合づくりに、子どもたちや30代~40代の若者世代を巻き込み行っていきたいという考えをお話しされました。
各講演後、意見交換時には、若者の川離れを懸念し「子どもが川と触れ合う機会を作るためにはどのようにしたらよいのか」など、参加者からの様々な意見や質問が上がり、活発な議論が交わされました。