表面流による¹³⁷Cs流出に土壌の凍結融解過程が与える影響

特任講師 五十嵐 康記

発表概要

この研究は、福島の山地斜面を対象として、人工的な裸地からの土壌侵食とそこに含まれる137Csの流出量に関して調査したものです。2012年から2014年にかけて実施された調査研究では、冬の低温で土壌が凍結し「凍上」が発生することがわかりました。凍上は、土壌表面の構造を破壊し、土壌表面からの土壌侵食を促進させる働きがあります。このため、表層に沈着している137Csは、春先から夏にかけ、より選択的に流出する事が明らかとなりました(図1)。侵食された土砂は、河川に流入し、下流へ輸送されると考えています。今後は、河川への影響も視野に研究を進めて行きます。

図表

図1. 概念図:冬に発生する凍上(Frost heaving) により、土壌表面の構造が破壊され、春から夏にかけて、表面の土壌表面の137Csが選択的に輸送される。

研究の意義・ポイント

本研究では、土壌侵食による137Cs流出に、土壌表面の季節変化から着目して、研究を実施しました。これにより、土壌表面状態の変化が、侵食土砂に含まれる137Cs濃度や137Cs流出量に影響を与える事を観測的に明らかにしました。

論文情報

論文はScience of The Total Environmentウェブサイトに 2021年1月にオンライン公開されています。

雑誌名Science of The Total Environment
論文タイトルImpacts of freeze-thaw processes and subsequent runoff on 137Cs washoff from bare land in Fukushima
URLhttps://doi.org/10.1016/j.scitotenv.2020.144706
著者Yasunori Igarashia, Yuichi Ondab, Yoshifumi Wakiyamaa, Kazuya Yoshimurac, Hiroaki Katob, Shohei Kozukad, Ryo Manomee
*aInstitute of Environmental Radioactivity, Fukushima University
*bDepartment of Integrative Environmental Sciences, Faculty of Life and Environmental Sciences, University of Tsukuba
*cSector of Fukushima Research and Development, Japan Atomic Energy Agency
*dMinistry of the Environment
*eDisaster Prevention Technology Division, Geo-hazard & Risk Mitigation, Railway Technical Research Institute