金指 努
- 所属
- 環境放射能研究所
プロフィール
名古屋大学大学院生命農学研究科修了 博士(農学)。森林および渓流の生態系や物質循環をテーマに研究を行ってきました。現在は、チェルノブイリ原子力発電所の冷却水供給池(クーリングポンド)にて、水生生物に含まれる放射性核種の調査と食物網を通した放射性核種の移行に関する研究を行っています。
研究テーマ
陸水生態系における放射性核種の動態解明
分野
森林生態学、渓流生態学、環境放射能
キーワード
渓畔林、水生無脊椎動物、外来性有機物
所属学会
日本生態学会、日本森林学会、日本陸水学会、日本分析化学会
研究概要
渓流沿いの森林(渓畔林)から、落葉期になると、渓流へ大量の落葉が落下・堆積します。渓流生態系の外からもたらされる、この外来性有機物は、森林に直射日光を遮られ、水中の藻類等、一次生産に乏しい渓流生態系にとって、重要な養分源です。落葉広葉樹で構成されていた渓畔林が常緑針葉樹の人工林に変化することにより、渓流生態系にどのような影響を与えるかについて、主に渓流内の水生昆虫等の無脊椎動物への影響を明らかにしてきました。
福島第一原子力発電所事故の発生後は、広く森林生態系における放射性セシウムの動態について研究をおこなってきました。特に林業樹種として重要なスギ、シイタケ生産の原木として利用されるコナラの、放射性セシウム吸収および樹体内輸送の動態解明に取り組んできました。放射性セシウムだけではなく、カリウム等の植物の必須栄養元素や非放射性セシウムとの関係から明らかにする取り組みをおこなっています。
また、福島第一原発事故前の研究を生かして、渓畔林から渓流生態系への落葉を介した放射性セシウムの移行を明らかにする研究も行いました。さらには、イワナ・ヤマメ等渓流魚の胃内容物を種同定して、餌の違いと渓流魚の放射性セシウム濃度との関係解明に取り組んでいます。
ひとこと
福島第一原発事故よりも四半世紀前に起きた、チェルノブイリ原子力発電所事故による汚染の現状・時間変化を把握することは、福島第一原発事故による陸水、森林等の放射性セシウム汚染の将来予測にも貢献できると考えています。これからも研究によって得られた成果を、学術雑誌等によって国内外に発信するとともに、社会還元できるよう努めて参ります。
略歴
- 2011年3月
名古屋大学大学院生命農学研究科 学位取得 博士(農学)
- 2011年4月-
名古屋大学 プロジェクト研究員
- 2016年9月-
森林総合研究所 プロジェクト研究員
- 2019年5月-
筑波大学 研究員
- 2019年9月-
福島大学 プロジェクト研究員