令和4年8月29日 第3回IERセミナー を開催しました。
<シャボシュ外国人客員研究員、高田特任准教授、金子教授>

日時

2022年8月29日(月)14:00~16:00

発表者

ピエール-アレクシス・シャボシュ外国人客員研究員
高田兵衛 特任准教授
金子信博 教授(食農学類)
(発表順)

演題

Refining fallout radionuclide baseline data to reconstruct soil redistribution rates in agricultural catchments of South America Quantifying the riverine sources of sediment and radiocaesium in the Pacific Ocean (Fukushima Pref.) (シャボシュ)
Distinct distribution of radio-Cs in river-sea system(高田)
Mycoextraction of radio-cesium and rehabilitation of Satoyama(金子)

環境放射能研究所(IER)では、所属研究者同士の交流、研究活動の推進を目的に、研究成果報告会「IERセミナー」を定期的に行っています。

8月29日に開催した令和4年度の第3回IERセミナーでは、日本学術振興会の招へい事業で外国人特別研究員としてフランスから来日し、本学の外国人客員研究員として受け入れているシャボシュ客員研究員、IERの高田特任准教授、食農学類からお越しいただいた金子教授が発表を行いました。オンライン聴講を含め研究者、大学院生ら29名が参加しました。

シャボシュ客員研究員
高田特任准教授
金子教授

シャボシュ客員研究員は、フランスの博士課程で行った、人工放射性核種(137Csとプルトニウム同位体)を用いた南米の集約的農業集落における土壌移動速度の復元に関する研究を発表しました。初めに南アメリカ大陸における核実験由来の137Cs分布図の作成に用いた手法について説明されました。この137Cs分布図は同大陸を対象として初めて作成されたもので、かく乱されていない土壌における137Csインベントリーの予測を可能とし、地球科学に関連する様々な手法を適用するための有用な参照データとなります。さらに、気候・環境の年代推定や復元を行うための強力なマーカーとなるプルトニウム同位体(239Pu、240Pu)を用いて、同大陸における放射性降下物の時間推移の精緻化を目指した研究についても紹介しました。最後に現在IERで行っている河川堆積物の放射性セシウムの供給源の定量評価や、河川から供給される福島県沿岸の放射性セシウムに関する研究について紹介しました。

高田特任准教授は、富岡川と富岡港から採取した水のrCs濃度を測定した結果、溶存態では河川水と海水でほぼ差がないが、懸濁態では海水が河川水の約1/3で、rCsの溶脱の影響があること、Kd値も海水は河川水の1/4であることを説明しました。rCsを画分別で(イオン交換、有機結合、可溶)抽出した結果、イオン交換画分は河川水の値が低く想定と異なったため、引き続きrCsの吸着挙動と河川流速の関係や懸濁粒子の特性等を明らかにする必要があると話しました。

金子教授は、食農学類で土壌生態学を専門に研究されています。セミナーでは、森林土壌の効率的な除染方法について発表しました。森林生態系の土壌食物連鎖における放射能汚染について説明した後、リターバッグ(落葉をメッシュバッグに入れて林床に置き微生物の働きで落葉が分解する)調査では放射性セシウムが想定以上に落葉に吸着されたこと、森林の樹木から作った木質チップを地面に敷設するとチップに菌類が生育し土壌から放射性セシウムがチップに移動することについて説明しました。

発表後には研究者による意見交換が行われ、活発な議論が交わされました。

質問時の様子