ウクライナ人研究者が中間貯蔵施設と原発を視察しました。
IERはSATREPSチョルノービリプロジェクトの一環として、ウクライナ人研究者オレナ・ブルドー博士を今年8月から12月までの4か月半、技術研修のために受け入れました。 ブルドー博士はチョルノービリ原発事故後の野生動物への放射線影響を研究しています。研修では、日本での原発事故後の取り組みを学ぶため、除染活動で発生した除去土壌を貯蔵する中間貯蔵施設と福島第一、第二原発を視察しました。原発視察には、福島に短期滞在し野外調査を行っているソロモン・アムノ博士(カナダ・サスカチュワン大学)も参加しました。
- 11月25日中間貯蔵施設見学
はじめに中間貯蔵工事情報センターで、除去土壌の運搬状況や貯蔵工事の状況について説明を受けた後、バスに乗り込み中間貯蔵施設の見学に向かいました。
中間貯蔵施設は福島県双葉町、大熊町にまたがる福島第一原発を取り囲むように整備され、その面積は16㎢におよびます。今回見学したのは施設の南側、大熊町に位置する部分です。施設内には住居や学校、公民館、神社など、かつて人々が生活していた痕跡が残り、中には2011年3月11日の地震発生当時のまま残されている様子を見ることができる特別養護老人ホームもあります。
チョルノービリでは福島県内で実施されているような大規模な除染は行われず、立入禁止区域は36年前の事故発生直後から再編されていません。ブルドー博士は、広大な施設や、安心して暮らせる環境を取り戻すための除染活動、それに伴う除去土壌の処分作業について興味深い様子で説明を聞いていました。
- 12月5-6日 福島第一、第二原発見学
12月5日に福島第二原発、6日に福島第一原発を見学しました。第一・第二原発ともに地震後に津波に襲われ核燃料を冷やすために必要な電源を喪失しましたが、第二原発は外部からの電源を確保できたことで事故を防ぐことができ、第一原発では電源が確保できずに水素爆発に至りました。
東京電力の社員から、第二原発では地震発生直後の原発の状況や、津波による電源喪失後、どのように電源を確保し事故を防ぐことができたかについて説明を受けました。第一原発では各原子炉で事故に至った経緯、また現在進められている廃炉作業や、来年度以降に放出される予定のトリチウムを含んだALPS処理水について説明を受けました。
実際に原発を見学し、事故の重大さを改めて認識するとともに、現在は可能な限りの技術を結集して廃炉作業が進められていることや、できる限り汚染水を発生させないための懸命な努力が続けられていることがわかりました。ブルドー博士はチョルノービリ原発と福島原発との事故後の対応の違いなどが非常に印象深かったようで、盛んに質問をしていました。今回の視察が各々の今後の研究活動に活かされることを願います。